インド最大の娯楽と言えば、やはり映画。日本でも「ムトゥ・踊るマハラジャ」のブレイクが記憶に新しいですね。
インドでの年間映画制作本数は、ハリウッドを超え、世界一を誇ります。
インド映画の特徴と言えば、まずキャストとして、やたらと綺麗なヒロイン、甘いマスクのヒーロー、そしてとことん極悪非道な悪役が挙げられます。
話の設定は、学園物、暴走族物、戦争物と多様化していますが、基本的にハッピーエンドのラブストーリー。
以前「ディルセ」という映画が話題になったことがあります。 この映画は、愛する二人がどうしようもない状況に追いこまれ、ついに二人で共に死を選ぶという壮絶なラストが印象的です。日本ではこの映画のファンは多いのですが、インド人に感想を求めると、「あんな映画はお金払ってまで見たくない」とコメントするのです。 映画はあくまでも夢物語であり、現実を忘れるひとときだからこそ魅力的なのであって、後味が悪い映画をわざわざ見たくはないという気持ちも、わかる気がします。
そして、インド映画のもうひとつの特徴として、忘れてはならないのが、踊りのシーン。 インドはまだまだ性的表現に敏感な社会で、映画の中ではキスシーンさえ稀。そのような条件の中で、男女の恋愛の高まりを表すのが、踊りなのです。
愛する二人のシリアスな場面から、いきなり大音量の踊りのシーンにかわり、多数のバックダンサーの前で激しい踊りをみせる二人。 そして舞台はいつのまにかスイスの山間。
「どうして?インドからスイスに?」なんて突っ込みをいれてはイケマセン。これは二人の愛が最高潮に高まったと言う、インド的間接表現なのです。
このシーンのためだけに海外ロケを敢行することは珍しくなく、また踊りと共に歌われる曲はサウンドトラックに収められ、その売り上げは映画のヒットと比例します。 インド映画において、踊りのシーンは極めて重要なのです。
インド映画への好奇心が湧いてきたら、まずは映画館へ足を運んでみましょう。 最近、大都市ではインド版シネマコンプレックスもあり、常時4、5本の映画が上映されています。音響も良く、館内は冷房がよく効き肌寒い程です。
マサラ味のポップコーンを片手に、広く快適なリクライニングシートに座れば、気分は自ずと盛り上がるでしょう! 言葉がわからない、なんて心配は御無用。話の大筋は、誰にでも理解出来るし、周囲のインド人の反応からも読み取れます。
踊りのシーンでは歌が口ずさまれ、悪役が倒される場面では映画館内が拍手喝采となり、まさに映画と観客の一体化です。
3時間と言う長い上映時間の後は、一仕事終えたような心地よさで満たされることでしょう。
話が前後しますが、「マサラ」とはヒンディー語で、スパイスのことです。 つまりマサラ映画とは、甘く、辛く、酸っぱく、そんなテイストをたくさん詰め込んだ映画を意味なのです。 しかし、インドの映画が全てマサラ映画、すなわち商業映画というわけではありません。 デリーで年1回開催される国内映画祭では数々の州から映画が出展されますが、偉大なる映画監督サタジット・レイを生んだベンガル州からは、身近な問題をテーマにした映画や芸術映画が多見受けられます。 広大なインドであるから、ところ変れば、映画も変るのです。
日本で「踊るマハラジャ」をはじめ、南インドのタミル映画が空前のヒットしましたが、北インドでのマサラ映画の代表格は、ヒンディー映画です。 主に映画産業の核であるボンベイ(ムンバイ)で撮影されるため、ハリウッドをまねてボリウッド映画とも呼ばれます。 ボリウッドは様々な人気俳優を輩出しており、映画に親しむ方法として、まずお気に入りの俳優を見つけるのもいいかもしれません。
マサラ映画にはまってしまったら、VCDを買って帰るという手もあります。 VCDとは、パソコンで見るビデオCD-ROMで、DVDが今だ普及していないインドでは、VCDが一般的です。ビデオテープもありますが、インドはパル方式で、日本のNTSC方式と違うため、そのまま持ち帰っても変換しない限り見ることが出来ません。
となれば、コンパクトなVCDが便利。 レコードショップに行けば、古い映画から最新映画まで品揃えが充実しており、ジャケットで選ぶもよし、近くのインド人に選んでもらうもよし、開けてのお楽しみです。
インドという国とインド映画とは、密接に結びついています。
マサラ映画は、インドが好きになるかどうかの登竜門と言えるかもしれません。